主な病気と治療方法
(内分泌・代謝)

診療案内

2型糖尿病

薬物治療

最近10年ほどで糖尿病治療薬は劇的に進歩致しました。外来および入院にて、エビデンスに基づいた治療薬の選択・適正化を行っております。また、入院では患者さんの糖尿病教育をしっかりと行い、インスリン頻回注射などからGLP-1受容体作動薬と基礎インスリン併用療法への切替えなど、QOL(生活の質)を重視した治療の検討を行っております。当科退院後は、紹介元のクリニック等へ逆紹介を行い、大学との病診連携に移行するケースが増えております。

糖尿病透析予防教育

ご紹介頂いた腎不全期の糖尿病患者に対して、糖尿病透析予防教育、治療の見直しを行なっています。逆紹介後も病診連携を通して、複数職種による糖尿病透析予防のチーム介入を継続しています。 腎臓内科と連携し、少しでも地域の透析導入患者を減少させることを目指しています。

糖尿病診療支援センター

内分泌代謝内科の医師2名が専属で配置されています。大学病院に入院する患者の約2割に糖尿病を合併しており、全診療科の血糖管理・コンサルト業務に対応しています。役割分担を明確にし、糖尿病診療支援センターは外科系の周術期血糖管理、それ以外の血糖管理を内分泌・代謝内科が担当しています。大学病院という性質上、心臓手術や移植手術など、侵襲が大きくかつ厳格な血糖管理が必要な手術件数が多く、当センターの役割の重要性が年々増しています。

1型糖尿病

カーボカウント

栄養管理室との連携で、カーボカウント導入も積極的に行っています。1型糖尿病において、食べる糖質量に合わせて「自分で」インスリン量を決定することが何よりも重要です。また患者さん個々人によって、摂取したカーボ(糖質)量に対する必要インスリン量は様々です。当科では、入院の上、1カーボ(糖質10g)に対する必要インスリン量を測定・設定し、食事に含まれる糖質量の勉強を担当医・栄養士の指導のもと学習して頂きます。

インスリンポンプ療法

頻回インスリン注射による血糖管理が困難な患者さんに対して、インスリンポンプ療法の導入を行っています。最新のポンプ機器では持続血糖モニター(CGM)とリンクして、低血糖を予測した段階で基礎インスリン注入が止まる機能や高血糖に対して自動で補正インスリンが注入される機能を備えていますので、夜間低血糖や無自覚性低血糖の患者さんには大変有用です。

間歇スキャン式持続血糖モニタリング(isCGM)

すべてのインスリン療法中の糖尿病患者さんに保険適用となりました。従来の自己血糖測定に比べ、血糖コントロールを改善し、重症低血糖リスクなども軽減するエビデンスも多く、当科では積極的に導入を行っております。

膵腎同時移植

当院は、腎不全を伴う1型糖尿病患者に対する膵腎同時移植の認定施設となっています。紹介いただいた患者さんは、まず当科に入院いただき適応を検討し、移植・消化器外科、泌尿器科、腎臓内科などと連携した治療が行われます。一般的に移植5年後の膵生着率は83%ほどであり、多くの方がインスリンを離脱します。

妊娠糖尿病

産婦人科との連携にて、外来または入院にてインスリン導入を行っています。最近では診断早期より積極的に当科が介入しており、個々の耐糖能に合わせた食事・生活指導と自己血糖測定を行い、妊婦さんの負担を最小限に軽減することにも重点を置いています。妊娠中の持続血糖モニタリング(CGM)も保険適応となり、必要な患者さんには導入しております。

高度肥満症

当院は肥満外科手術の認定施設です。移植・消化器外科を中心に、総合診療科、栄養管理室との連携にて、高度肥満患者に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を実施しています。適応には、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を有するBMI35以上であることが必要です。但し、内科治療で十分な血糖管理が得られない場合などは、BMI32.5以上で条件付き適応になります。肥満手術目的にご紹介いただいた患者さんは、食事運動療法、行動療法および薬物療法で6か月間経過を見ます。それでも十分な減量効果が見られない場合に、手術の適応となります。当院で手術を受けた患者さんの多くが、大幅な体重減少(20~50kg減)、耐糖能や脂肪肝の改善を達成しています。

甲状腺癌

甲状腺細胞診

悪性が疑われる甲状腺結節に対して、外来で実施しています。

アイソトープ(I-131)治療

長崎県内で唯一の施設であり、県内外から多くの症例を紹介頂き、年間の治療件数は約30~40症例ほどです。全国的に施設数が不足しているため、国内の平均待機時間は6か月ですが、当院では平均待機時間は2カ月程度となっています。

分子標的薬・がんゲノム医療

I-131治療抵抗性の進行甲状腺癌の患者に対して、2014年より分子標的薬が使用できるようになり、当科では多くの患者さんに対して治療を行っています。また、当院は県内唯一のがんゲノム医療拠点病院であり、標準治療に奏功しない甲状腺癌患者さんに対して、遺伝子変異に応じた薬剤の選択も行っております。

原発性アルドステロン症

本邦では高血圧症例の5~10%程度が、副腎からのアルドステロン過剰分泌が原因の原発性アルドステロン症(PA)です。長崎市内はもとより長崎県内の病院、クリニックからPA疑いの患者さん紹介が増加しています。PAの診断には、内分泌機能検査の他に、カテーテル検査(副腎静脈サンプリング)が不可欠であり、放射線科と協力し実施しております。副腎静脈サンプリングの結果、片側性の場合は泌尿器科での手術を検討し、両側性の場合は当科で薬物療法を実施しています。

その他の内分泌疾患

その他、下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、性腺、骨代謝に関しても、ご紹介頂き診療に当たっています。外来での各種内分泌機能検査(負荷試験)、およびホルモン補充療法に広く対応しております。

主な研究活動

  • NODマウスを用いた基礎研究

    1型糖尿病モデルマウス(NODマウス)を用いた免疫学的病態の解明、発症阻止治療の開発の研究を行なっております。転写因子IRF4の膵島自己免疫(主にCD4,CD8T細胞)の制御機構の解析や、5-アミノレブリン酸(5-ALA)内服による発症抑制効果の検証に取り組んでいます。

  • 抗PD-1抗体による1型糖尿病責任遺伝子探索

    多施設共同研究で全国33施設より、抗PD-1抗体 ニボルマブ投与後の1型糖尿病、間質性肺疾患発症患者の全ゲノム解析を進めています。

  • SGLT2阻害薬服用2型糖尿病および各種疾患の
    骨微細構造変化

    第二世代高解像度末梢骨用定量的CT(HR-pQCT)を用いた、2型糖尿病患者へのSGLT2阻害薬服用による骨代謝への影響を観察するランダム化比較試験(RCT)を行っています。また、整形外科との共同研究としてHR-pQCTによる1型糖尿病と2型糖尿病の骨密度や骨微細構造を評価する横断研究や、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、原発性副甲状腺機能亢進症および高度肥満症の治療前後の骨微細構造の変化を評価する縦断研究を行なっています。

  • ミトコンドリア糖尿病での5-ALAの有効性

    最近コロナ感染抑制効果が期待されている5-アミノレブリン酸(5-ALA)内服によるミトコンドリア糖尿病における耐糖能改善効果を検討するための単群非盲検介入試験を行なっています。

  • 1型糖尿病へのSGLT2阻害薬のグルカゴン分泌への影響

    多施設共同研究「1型糖尿病の補助療法イプラグリフロジン服用後のグルカゴン分泌動態の変化が血糖コントロールと血糖変動に与える影響についての検討(Suglat-AID)」が現在進行中です。

  • コロナ自粛による若年者の体重増加とその関連因子探索

    長崎大学保健センターと共同で、コロナ禍による学生の体重変化に影響する生活因子の探索研究を進めています。

  • 長崎県内の医療施設での糖尿病治療標準化に
    向けた取り組み

    長崎大学病院では2019年度から院内の糖尿病治療標準化に向けた取り組みを行ってきました。この経験を元に、県内の糖尿病専門医不在の医療施設に対してもオンラインシステムを利用して同様の介入を行い、県内の糖尿病治療の標準化を目指す取り組みを開始しました。

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